社畜よもやま話

社畜が幸せを目指す話。

死ぬ気では頑張るな

「若いうちは死ぬ気で頑張った方が良い」

とは本当だろうか?私はこれには反対である。なぜか。死ぬ気で遊んだほうが良いからではない。「死ぬ気」で頑張る頑張り方を間違えると鬱になるからだ。

 

さて、「若いうちは死ぬ気で頑張る」べきか、考えてみようと思う。

 

ーそもそも何のために頑張るの?

将来のためと一般的に言われるが、では将来どのようになれば良いのか。どのようになれば幸せなのか。

人それぞれだろうが、ここは「マズローの欲求5段階説」を参考に考えてみる。

マズローの欲求5段階説」によると、欲求は5つに段階分けでき、上の欲求が達成されると一つ下の欲求へのニーズが高まる仕組みだそうだ。

・生理的欲求ー食欲、睡眠など生存のための欲求

・安全の欲求-健康に、安定した暮らしをしたいという欲求

・社会的欲求-仲間を得たい、集団に所属したいという欲求

・承認欲求-他者から認められたいという欲求

自己実現欲求-自分自身が満足する自分でありたいという欲求

 

つまり、食欲が満たされれば安定した暮らしを求めるし、安定した暮らしが手に入れば友人や恋人を求めるというわけである。将来のために若いうちに苦労するのは、将来的にこの5つを満たすためだとしよう。

 

次に5つの目標を満たすのに必要なことについて考えてみる。

①お金

生理的欲求や安全の欲求を満たすのに欠かせないのがお金だ。社会的欲求や承認欲求もお金があれば満たされやすくなるだろう。具体的にどれくらいのお金が必要なのか。プリンストン大学のアンガス・ディートン教授の研究によると、年収が800万円を超えると、年収と幸福度の相関は見られないという。

 

②家庭や友人

結婚して子育てをする、家庭を持つこと。安全の欲求や社会的欲求を満たすのに必要そうだ。また、定期的に連絡を取り合う友人がいるということで、社会的欲求も満たされやすくなるだろう。

 

③仕事で認められる

仕事で評価されることで、わかりやすく承認欲求を満たすことができる。

 

④健康

若いうちこそ忘れがちだが、健康な精神と身体は基礎的な欲求-安全の欲求であり、幸せに欠かせないものである。

 

自己実現欲求はさておき、将来のため(この5つの欲求を満たすため)には、これらを全て両立させる必要がある。結婚し子育てをし、幸せな家庭を築く。かつ仕事も両立し出世する、年収は将来的に一人あたり800万円。健康にも留意し、食事はバランスを意識し、睡眠は8時間以上とる。

 

ーさて、将来のための目標はわかったが、どれくらいの人がこれを達成できているのであろう。

これに近い状態を手にいれている人ももちろんいるだろうが、ごく少数に思う。

まず、年収800万以上の割合は10%程度(国税庁 令和4年分民間給与実態調査)であるため、1割程度の人間しかこれを実現できない。また、生涯未婚率は男性28.3%、女性17.8%(2020年国勢調査)であることから、結婚し子供を育て家庭を作り上げている割合も最大で7割程度であろう。

つまり、本当に単純計算で「年収800万以上×結婚し子育て=1割未満」なのだ。

 

この1割の上澄みに入るために、「若いうちに死ぬ気で頑張る」というわけである。

 

そして、「死ぬ気」で頑張るという頑張り方というのは、寝食を削って~と想像されやすい。職場に泊まって働きづめ、食事はカップ麺とかいうあれだ。それを続けるとどうなるか。

 

ー健康を失うのである。

これは、安全の欲求という基礎的な欲求が満たされないことになるため、結局幸せとは程遠くなるのだ。

 

実際私がそうである。私は20代前半の時それはそれは死ぬ気で頑張った。月~金まで欠かさず労働。定時後もスキルアップのために自己研鑽し文字通り寝食を削った。土日も基本的に仕事、空き時間は溜まっている掃除をしたり、人と会ったり。この生活を続けること5年で見事に鬱になったのである。

 

そして鬱になった今、「死ぬ気で頑張ったのはいいけど、頑張ったから一体何が手に入ったのか。少なくとも健康を失っている」という認識だけが残っている。

死ぬ気で頑張るのは美談だ。素敵なことだと思う。頑張った方が良いし、上澄みに入れなくたって、頑張ったからこそ手に入る経験だってあるだろう。ただし、頑張り方は人それぞれだ。死ぬ気で頑張る頑張り方を間違えた場合、何より基礎の健康を失う恐れがある。また、死ぬ気で頑張っても幸せを手に入れられるのは1割の上澄みだ。それなら、「自分のペースで、若いうちも年老いてからも、自分の幸せを探して歩んでいく方が良い」

 

よって、私は「若いうちは死ぬ気で頑張った方が良い」には反対である。